火葬式ってどんなもの?ほかの葬儀との違いや特徴を紹介

大森にある火葬場

葬儀が多様化していっている現在、「より小さく、よりスレンダーなかたちで行う葬儀」にも注目が集まっています。

少子高齢化の影響もあり、「亡くなった人が非常に高齢であり、親しく付き合っていた人も亡くなっているため、参列者の数も少ない」という状況にある人が多いのも、この「より小さく、よりスレンダー化した葬儀」が選ばれるようになった理由といえるでしょう。

今回はそのようにスレンダー化していく葬儀のなかでも、もっとも簡素な「火葬式(かそうしき)」についてとりあげます。

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この記事の目次

  1. 火葬式とは火葬のみを行う葬送儀式
  2. 火葬式を行う場合にかかる費用
  3. 火葬式の流れ
  4. 火葬式を行うための準備まとめ
  5. 火葬式のメリット・デメリット
  6. この記事のまとめ
  7. 監修者コメント

火葬式とは火葬のみを行う葬送儀式

ドアが開いている霊柩車

「火葬式とは何か」を知るためには、まずは「そもそも一般的な葬儀(一般葬)の流れはどんなものになっているか」ということを知らなければなりません。

一般葬は、地域や宗教、家族や故人の意向によって多少異なりますが、以下のような流れと特徴を持ちます(※仏教の場合)。

一般的な葬儀のスケジュールは以下の通りです。※基本的には2日間

  1. 通夜
  2. 葬式
  3. 火葬
  4. 火葬当日に初七日法要(繰り上げ法要)
  5. 同日に精進落とし
  6. 帰宅

また、この2日間のうちに宗教者(僧侶)にお経を読んでいただく機会が複数回あります。

  • 枕経(納棺の前に行われるお経
  • 通夜・葬式・火葬場で釜に入れる前・火葬場で収骨をするとき
  • 初七日法要の6回、お経をあげてもらう

そして、葬儀には通常家族や親族だけでなく、故人と付き合いのあった人や遺族と付き合いのある人などの弔問を受け付ける

対して、火葬式の場合は非常にシンプルです。

火葬式の場合、通夜や葬式は行いません。
また、弔問客も基本的には受け付けず、家族(親族が参加することもあります)のみで行うのが一般的です。

このため、「安置して、24時間を経過したら火葬にし、収骨をして終わる」という非常にシンプルなかたちを取るのが、火葬式の特徴です。

このような特性を持つため、火葬式には「お金がかからない」「手間が少なくて済む」というメリットがあります。
なお、火葬式は「直葬(ちょくそう)」といわれることもありますが、どちらも同じものです。

一日葬と火葬式の違い

「小さい葬儀」といえば、一日葬や家族葬もあります。
また、「費用」が理由で火葬式を選ぶ場合は、「無宗教との葬儀(宗教者に対してお布施を渡す必要がない)」も選択肢に上がってくるでしょう。

ここではこの3つと火葬式の違いを取り上げます。

一日葬と火葬式の違い

一日葬とは、一般葬のかたちから通夜を抜いたかたちをいいます。
夜に儀式を行わず、火葬を行うその日に葬式を行い、その後に火葬、そして収骨と初七日法要~精進落としへと進むのが原則です。

一日葬の場合、通夜は省くものの葬式は行うため、祭壇などが必要になります。
宿泊料や通夜振る舞いの費用が軽減されること、また一日葬の場合もこぢんまりとした葬儀になることが多いことから、これも費用を安く抑えられます。ただ、基本的な葬儀プランである「祭壇の準備」が必要となるため、火葬式に比べると値段は高くなります。

「火葬式というかたちで送るのは、少し寂しい。やはり祭壇で手をちゃんと合わせたい。
しかし時間的な都合もあり、お通夜までを行うのは難しい」
などのような人には、この一日葬がおすすめです。

家族葬と火葬式の違い

現在は「家族葬」が非常に人気を博しています。
これは遺族や親族、あるいは極めて親しい間柄の友人などだけを招いて行うものであり、一般の弔問客は基本的にはお受けしません(「それでも来てくれた人は受け入れる」という場合も多くありますが)。

家族葬の場合は、単純に「呼ぶ人の数が少ない」というだけの話であり、その流れは一般葬と変わりありません。
通夜を行い、通夜振る舞いを行い、翌日に葬式を行い、火葬の後には精進落としの食事までを済ませます。

「こぢんまりとした葬儀をやりたいけれど、一般葬と同じくすべての要素を押さえておきたい」
「とても忙しい人だったから、最後くらいは家族だけでゆっくりと過ごしたい」
と考える人にとっては、この家族葬が第一の選択肢として挙がってくるでしょう。


時間と金額を考えた場合、
火葬式(通夜も葬式もなし)<一日葬(通夜なし)<家族葬(通夜も葬式、精進落としの食事などもあり)
となります。
また、一日葬でも家族葬でも、一般葬よりも安く、小規模なものになります(例外はあります)。

無宗教の葬式と火葬式の違い

もう一つ、無宗教の葬式(「無宗教葬」と呼ばれることもあります)と火葬式の違いを見ていきましょう。

無宗教葬は、「一日葬」「家族葬」との違いとは異なり、
「宗教者を呼ぶか呼ばないか」「特定の宗教にのっとった葬儀を行うかどうか」
を問題にするときに出てくる考え方です。

「故人の希望で、葬儀にはできるだけお金をかけないでくれといわれている」
「現状、家計が厳しくて、大きな葬儀は挙げられない」
「一家の大黒柱が亡くなってしまい、遺児の養育などを考えると葬儀でお金を使うわけにはいかない」

といった金銭的な事情で火葬式を選ぶ場合、「お布施」が非常に大きな負担となってきます。
お布施は、葬儀費用の4分の1程度を占めることもあるものです。

火葬式の場合は一般葬に比べるとお布施が少なくて済むという特長があり、55,000円~150,000円程度をお渡しすればよいと言われています。

一般葬儀が500,000円程度になることがあるという点を踏まえれば、たしかにお布施の金額も抑えられるといえるでしょう。

しかし、「金額を抑えること」を目的として火葬式を行う場合、この金額が負担になってしまうこともあります。
このときに出てくるのが、「無宗教葬」です。

無宗教葬では、宗教者は呼びません。お経などもなく、静かに参列者だけで見送ります。
この「無宗教葬」は、葬儀の規模に関係なく行われることもあるもので、音楽や花など、故人が愛したもので会場を満たして送り出したいと考える人にとって選びやすいものでもあります。

無宗教葬自体は、必ずしも「安く挙げること」だけを目的にしたものではなく、場合によっては一般葬と同じくらいのお金がかかります。

しかし、「無宗教葬」と「火葬式」を組み合わせることで、お布施も祭壇費用もカットした、金銭的負担の少ない葬儀を行うことができます。

もっとも、これはあくまで「基本」にすぎません。
たとえば家族葬であっても精進落としを省略することもありますし、一日葬であっても祭壇を省略して遺影とお花を簡単に飾るだけでお見送りをすることもあります。

「料金を安くあげること」を第一の目的としない場合、家族葬であっても一般葬よりも高くなることもあります。

ただ、基本を押さえておくことで、「自分自身が送られるときにどのような葬儀をしてほしいか」「故人の希望を叶えるためにはどのような葬儀がよいか」を選びやすくなるでしょう。

火葬式を行う場合にかかる費用

お金と電卓

火葬式にかかる費用について考えていきましょう。

意外に思われるかもしれませんが、火葬式を行う場合でも、さまざまなところにお金がかかります。
しばしば、「火葬だけなら30,000円程度で終わるだろう」という考えを持っている人も見受けられますが、もっとも安い値段帯のものであっても、棺と骨壺を合わせただけで30,000円程度はかかります。

また、火葬費用は市町村が運営しており、基本的にはそこに住んでいる人は無料もしくは安価で焼いてもらうことができます。
しかし場所によっては、そこに暮らしている都民であっても費用が60,000円を超えること(東京都の瑞江葬儀所、7歳以上の場合都民でも61,000円かかる)もあるため、ある程度の葬儀費用は確保しておく必要があります。

また、現在は、火葬式であっても、葬儀会社を介して行う人が多いかと思われます。
自分の力だけで葬儀を滞りなく行える人は、決して多くはないでしょう。そのため、人件費もかかります。さらに、ドライアイスや寝台車の手配、そのうえにお布施も加算されます。

葬儀の費用は非常に分かりにくく見えにくく、参列者のなかには、「実際にかかった金額の5分の1~7分の1程度の葬儀だと思っていた」という人もいました。
「もっとも簡素な式である火葬式」の場合は、特にこのような誤解が起きやすいかもしれません。

こぢんまりした葬儀を扱う葬儀会社も増えていて、火葬式も選びやすくなっています。
しかし、一般的な火葬式で、そこに加えて宗教者も呼ぶという場合は30万円程度の予算は組んでおきたいものです。

「故人の意向が『とにかく小さい式にしてほしい。財産を可能な限りみんなに遺したい』というもので、最期の時までそう繰り返していた」というような場合は、その意向に添うことが重要になってきます。

この場合は、

  • 僧侶は呼ばない
  • 棺などのランクにもこだわらない
  • 安置箇所は自宅を選び、セレモニーホールや宿泊施設を利用しない
  • 食事もとらない
  • そもそも火葬場が無料の地域である

などの条件をすべてクリアできるのであれば、100,000円台での葬儀も可能にはなります。
ただ、このようなやり方は、「故人の意向を最大限に尊重すること」を目的として組んだときのものではありますが、さまざまな面で少しずつ不便が出る可能性はあります。

また、火葬場の料金設定など遺族側ではどうしようもない条件がつくほか、「家で安置できるかどうか」も問われるため、この金額内に収めることはかなり難易度が高いといえるでしょう。

現在の葬儀会社は、「故人様やご遺族様のご意向に添うこと」を一番の目的としているところがほとんどです。
そのため、費用も含め、希望があるのであればきちんとそれを伝えるようにしてください。

火葬式と通夜・葬式を行うときとの費用比較

では、火葬式と比べて、「家族葬の相場」はどうなのでしょうか。

これに関しては、エンディングデータバンクのまとめた「家族葬の平均費用」が役立ちます。
これは、

  • 首都圏に限ったデータ
  • 参加人数は10~30人

という条件であるため、データにはやや偏りがみられますが、一つの指針にはなり得ます。

このデータによれば、家族葬の平均費用は110万円程度だということでした。

この金額は、一見すると非常に高い金額のように思われます。
葬儀全体の平均費用が200万円(解釈が分かれるデータではありますが)ということや、「うちで行う家族葬は500,000円」という広告を目にすることが多いため、「家族葬なのに110万円」とする数字は高すぎるように思えます。

ただ、家族葬の場合、葬儀自体は50万円程度で行えても、そのうえにお布施がのります。
家族葬のお布施の平均はなかなか出しにくいです。2日間にわたって計6回の読経が行われるため、300,000円程度は覚悟しておかなければなりません。

少し抑えめにする場合であっても、200,000円は必要でしょう。
精進落としで食事などをする場合は、さらにこの上に「飲食費用」が乗ります。

都心部は比較的葬儀費用が高くなる傾向にあります。
そのため、地方や規模によっては、800,000円程度で収まるかもしれません。

また、「読経はいらない」「僧侶には来ていただくが、一律料金の僧侶出張サービスを利用する」と割り切れるのであれば、もう少し値段は安くなります。


ただ、よほど特殊な形態の葬儀を希望しないかぎり、家族葬は火葬式よりも高くなります。
その差額はかなり大きく、500,000円以上変わってくることも珍しくありません。
こうして考えると、「料金の問題」で火葬式を選ぶのは、非常に理に適っている判断だといえるでしょう。


出展:エンディングデータバンク「家族葬の平均費用」
https://data.urban-funes.com/data/cost-of-family-funeral/

火葬式の流れ

火葬式は、通夜や葬式を含みません。
このため、一般葬や家族葬、一日葬とはまた異なったスケジュールを取ることになります。

火葬式のスケジュールは以下のようになります。

  1. 臨終を見守る
  2. お寺や葬儀会社などに連絡する
  3. 葬儀会社がすぐに来てくれるので、ご遺体を安置する。家やセレモニーホールの控え室を使う
  4. 打ち合わせ
  5. 24時間以上経過後に、火葬を行う
  6. 収骨

なお、火葬式の場合であっても、「亡くなってすぐに火葬をすること」は特段の事情(感染症など)を除き、法律で禁じられています。24時間以上経ってからでないと、火葬を行うことはできません。

火葬式を行うための準備まとめ

火葬式を希望の場合であっても、葬儀会社の初動には変わりありません。
365日24時間いつでも対応してくれますし、おそらくは1~2名の担当者がついてくれるでしょう。

打ち合わせのときには、「火葬式を希望する」ということをはっきりと伝えてください。
葬儀会社によって多少の違いはあるものの、「火葬式を行うご家庭は非常に珍しい。2年に1回あるかどうか……」
という葬儀会社もあるため、最初に伝えておいた方が混乱が少なくて済みます。

また、その際には、

  • どういった意図で火葬式を望むか
  • 宗教者は呼ぶか呼ばないか
  • 宗教者を呼ぶ場合は、菩提寺を使うかどうか

などをまとめておくと便利です。

「どういった意図で火葬式を望むか」というのは、
「費用を抑えることを目的としているのか、それとも故人の遺志によるものなのか」などです。

前者の場合ならば葬儀会社の方も極力安いプランを提案してくれるようになりますし、後者の場合はお別れの花束を故人の好きな花で豪華に仕立てるなどの提案がしやすくなるかもしれません。

どこまで呼ぶか?

葬儀のかたちに、「正解」はありません。
このため、火葬式を行う場合であっても、「親族まですべて呼ぶ」というご家庭もあるでしょう。

ただ、あくまで筆者の体感にすぎない話ではありますが、火葬式の場合の参列者の数は「家族葬」よりもさらに少ない傾向にあるように思います。

家族葬の場合は故人の兄弟や孫、おじやおばまで参加するケースも多く見られますが、火葬式の場合は「子どもだけ」などのようなケースがみられます。

火葬式の場合、

「喪主がそもそも故人とほとんど関係がなかった」
「家族間の仲が非常に悪く、あくまで儀礼的に処理をするために来た」
「もう周りの家族も高齢であり、金銭面・体力面・精神面から見ても、一般葬に対応できない」

というような特別な事情でこの形態を選択する場合もあります。

一人っ子であり、親はすでに鬼籍で、本人も独身だった……というような場合は、
ほとんど顔も合わせたことのない親戚などが喪主を務めるケースもあります。
このようなケースでは、参列者もほとんどなく、喪主と喪主の配偶者だけで送ることになる可能性も高いと言えます。

それ以外のケースでは、一緒に住んでいた家族や離れて住んではいるけれども直系の家族で送ることが多いと思われます。

ただ、「本人は非常に慕われていたけれど、生前の強い希望で『どうしても』ということで火葬式をすることになった」などの場合は、「どこまで呼ぶのか」をしっかりと精査していくことが求められます。

僧侶を手配する

宗教者(仏教の場合は僧侶)を呼ぶ場合は、まずは菩提寺に連絡をするのが常道です。
これを怠り、ほかのところに勝手に頼んでしまうと納骨のときにもめてしまいかねません。

また、無宗教の葬儀を行った場合も、同様のトラブルが起きる可能性があります。
ただ、

  • 家族に縁の薄い人で、そもそも先祖代々の墓というものがない
  • 無宗教の葬儀をした後に、納骨堂あるいは宗教を問わないところへの埋葬を希望している
  • 菩提寺にきちんと連絡をしたが、日程の都合がどうしてもつかないのでほかのところにお願いしてもよいとされた

などのような場合は、ご僧侶様派遣サービスや無宗教での葬儀を行っても構わないでしょう。
ご僧侶様派遣サービスの場合、菩提寺などに頼む場合よりも安く、50,000円台で済むこともあります。

精進落としについて

家族葬や一般葬の場合、火葬後に繰り上げ初七日法要が行われ、さらに精進落としの食事が振る舞われるのが一般的です。
もともと初七日法要は、人が亡くなった日から7日目に行われる法要でした。

また、「精進落としの食事」は四十九日にとるのが普通でした。
しかし時代が経つに従い、精進落としは「僧侶をねぎらうもの」という意味を持つようになっていったため、初七日法要と組み合わせて行われるようになっていきました。

現在はこれがさらに短縮化され、「火葬をしたその日に、火葬場から戻ってきて繰り上げで初七日法要を行い、その後に精進落としの食事をとる」というかたちに変化していっています。

「通夜や葬式のときの料理に生臭物(肉や魚)を取り入れるかどうか」は、地域や家族によって大きく異なります。しかし通夜や葬式のときにこれらをとらない家庭であっても、精進落としの食事の後は通常の食生活に戻ります。

このような初七日法要や精進落としの食事については、火葬式ではどのように考えればよいのでしょうか。
これについては、各家庭の考え方によって差がみられます。

「なんとなく法要まではやっておかなければ落ち着かない」
「精進落としを行うという意味もあるが、なかなか顔を合わせることのない家族だから、こんなときくらいは一緒に食事をしたい」
ということであれば、初七日法要~精進落としの食事をするとよいでしょう。

ただ、初七日法要を行ったり精進落としの食事をしたりするということになれば、お金も時間もかかります。
僧侶に読経をしていただく必要がありますし、食事代もかかります。また、これらを行うためのスペースの確保も必要です。

火葬式にする理由が、時間的な都合や金銭的な都合、あるいは故人の強い希望や人間関係の希薄さによるものであるのなら、無理に初七日法要や精進落としの食事の席を設ける必要性は薄いといえます。

究極的には、葬儀というのは「遺された人間が納得するために行うもの」です。
初七日法要~精進落としをするにせよしないにせよ、そこには厳格に定められた「決まり」があるわけではありません。
自分たちと故人が納得するかたちをとるとよいでしょう。

なお、「初七日法要は行わないが、四十九日法要は行う」などのやり方も可能です。
葬儀が自由にカスタマイズできるようになっている昨今、法要のかたちもまた遺族でカスタマイズが可能なものになっているのかもしれませんね。

火葬式のメリット・デメリット

火葬式には一般葬や家族葬、一日葬とは異なった特徴とメリット・デメリットがあります。
最後にこれについてまとめましょう。

なお、ここでいう「火葬式」とは、

  • 非常に小さいものである
  • 参列者は呼ばない。家族だけで行う

というものを想定しています。

メリット

1.数多い葬儀のなかで、もっとも費用が抑えられる形態である

「火葬だけを行う」という非常にシンプルな葬儀のかたちであるため、数多い葬儀のなかでもっとも費用が抑えられる形態です。
宗教者を呼ばなければお布施も発生しませんし、ほかの葬儀に比べて初七日法要や精進落としの食事の手配をする必要が薄くなるという特徴もあります。
非常に大変なのであまりおすすめはしませんが、「可能か不可能か」でいえば、葬儀会社を介さずに行うことも可能ではあります。

自宅を安置場所とすれば、セレモニーホールなどを借りる必要もありません。
公営の火葬場が「自治体の住人ならば、火葬を無料で行う」としているところならば、もっと費用は安くなります。

金額を抑えたいと考えている人にとっては、火葬式は非常に優れた選択肢だといえるでしょう。

2.参列者などへの気遣いが不要である

葬儀のときには、数多くの人が足を運んできてくれます。
これはとてもありがたいことではあるのですが、同時に、非常に疲れることであるのも事実です。

落ち込んでいるときに参列者への対応をしなければならなくなりますし、忌明けのあいさつも必要です。
火葬式で家族だけで送ると決めたのならば、これらの煩雑さもなくなります。

3.お礼の手配などが必要なくなる

あくまで原則論ではありますが、火葬式の場合、香典を持参する必要はないとされています。
また、当然喪主側にも香典返しを用意する必要がなくなるというメリットもあります。
加えて、「受付をしてくれたことのお礼」なども必要なくなります。

4.時間がかからない

あまり意識しない人もいるかもしれませんが、葬儀というのは非常に拘束時間が長いものです。
通夜~精進落としまでをしっかりする場合、丸2日(短い場合でも1日半)は拘束されます。

非常に仲がよかった家族などの場合はともかく、

「30年前に1度会ったきりの人。ほかに行う人がいないから、自分が喪主を務める。
しかし亡くなった方は北海道に住んでいて、自分は福岡で仕事をしている……」

というような場合は、時間的拘束が長くなるのはかなり苦しいのではないでしょうか。

しかし火葬式の場合は、「死後24時間以内は火葬をしてはいけない」という決まりはあるものの、送別にかかる時間は一般的な葬儀に比べるとずっと短くなります。

デメリット

火葬式には、ほかの葬儀にはないメリットがあります。
しかしそれと同時に、さまざまなデメリットを含むものでもあります。
それについて見ていきましょう。

1.周囲の理解を得られないこともある

「故人が希望していた」「金銭的な余裕がない」という事情で火葬式を希望する場合でも、周りからの理解が得られないこともあります。
「最後のお別れの場を設けてもらえないのか」と反感を持たれる可能性も多いため、注意が必要です。特に、「本人は非常に交友関係の広い人だったが、本人の希望で火葬式にするしかない」などのケースの場合は、事前に周りに話しておいた方がよいでしょう。
また、「どこまでを呼ぶのか」についてもしっかり考えておかなければなりません。

これは家族葬にも見られる悩みです。
特に親しく付き合ってくれていた人などには、遺族側から連絡をするのもよいでしょう。

2.後から弔問客が来る場合もある

火葬式の場合、基香典は不要のため香典返しも用意しないのが原則です。
しかし、「火葬式が終わった後に、亡くなっていたことを知った」ということで、弔意を表すために家に訪れる人もいます。

一般葬の場合、このようなケースに備えて、香典返しを家に少し置いておくのが普通です。しかし、「葬式であるためそもそも香典返しを用意していなかった場合、この「後日の弔問」で香典をいただいた場合対処に困ることもあります。

3.納骨に工夫が必要になることがある

「安く挙げることが目的だから、菩提寺の住職には頼まずに無宗教で火葬式にする」
「お経はあげてもらいたいが、お布施が厳しい。僧侶派遣サービスを使う」
などのようにしたとき、「菩提寺の墓にいれること」が難しくなります。このため、後々でトラブルが起きることもあります。

4.お別れまでの時間が短い

一般葬、家族葬、一日葬、そして火葬式と、葬儀のかたちはさまざまです。このなかで火葬式は、もっとも「お別れにかけられる時間」が短い形式です。
通夜を挟まないこと、火葬場でお別れが行われることから、ご逝去~収骨までの時間が短く、心残りとなることもあります。

ただ、「短い葬儀ならば心が込められない」ということはありません。
たとえお別れまでの時間が短かったとしても思い出を思い返し語り掛けることはできます。
また、亡くなった方をいつまでも心の中にとどめておくのも、立派な供養のかたちです。

この記事のまとめ

  • 火葬式は「直葬」とも呼ばれ、火葬のみを行う形式です。通夜や葬式は含みません。
    特殊なケースではない限り、家族だけで、こぢんまりとした葬儀を行います。

  • 通夜を行わず葬式だけを1日で行う「一日葬」、家族だけで行うけれど通夜や葬式を行う「家族葬」、無宗教で葬儀を行うが通夜や葬式を行うこともある「無宗教葬」、いずれのものとも差別化されます(「火葬式で無宗教葬」などはできます)

  • 火葬式の場合、費用が非常に安くなります。僧侶にお渡しするお布施も含めても、500,000円以下に抑えることも可能です。家族葬の半額程度で済むのがメリットです。
    また、火葬式の場合は、「参列者に煩わせられない」「お礼を考えなくて済む」「時間が短い」といったメリットがあります。
    ただ、「後日弔問客が来たらどうするか」「周囲の人の反対があるかもしれない」「納骨のときにトラブルがある可能性がある」「お別れまでの時間が短い」というデメリットもあります。

  • 火葬式は、ご逝去→葬儀会社に連絡→安置→打ち合わせ→火葬 の流れをとります。
    精進落としや初七日法要が行われるかどうかは、遺族や故人の意向で決まります。
    火葬式にすると決めて葬儀会社と打ち合わせをする前に、「どこまで呼ぶか」「宗教者はどうするか」「食事はどうするか」についてもしっかりと話し合っておきましょう。

葬儀のスレンダー化がよく取り上げられるようになってきた現在、「火葬式」も一つの選択肢となっています。
葬儀のかたちに、明確な「100点」はありません。
遺族が後で悔いることのないような葬儀を選んでいくことこそが重要です。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

火葬のみの葬儀スタイルを「火葬式」と表現するのには少々違和感を感じますが、葬祭業者のみならず、一般の間でも「火葬式」という言葉が聞かれるようになってきたこととから、数年後には市民権を得るのではと推測されます。

少し前までは、火葬のみですませる「直葬」は、寂しいイメージがありましたが、現在は、直葬向けの安置室も増え、家族でゆったりとお別れできるよう葬祭業者も工夫をしているところが多いように思います。火葬式だからといって、何もしてはいけないわけではありません。花を飾ったり、安置場所に友人・知人がお別れに来ていただいてもかまいません。なお、火葬式だからといって、火葬費用、棺、ドライアイス、搬送費、人件費等はかかります。


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