「サ高住」って何のこと?サービス付き高齢者向け住宅の定義・使い方・注意点

「サ高住」って何のこと?サービス付き高齢者向け住宅の定義・使い方・注意点

「サ高住(さこうじゅう)」とは、「サービス付き高齢者向け住宅」のことです。「サ付き」とも呼ばれています。

かつては、終の棲家というと「自宅」が基本でした。しかし現在はさまざまな選択肢があり、「サ高住」もそのうちのひとつです。

サ高住は、「賃貸住宅であり、かつ内装がバリアフリーに対応しているもの」と考えてください。

サ高住と有料老人ホームは、同じように高齢者を対象としていますがこの2つは違う性質を持つものです。サ高住は比較的元気な人を対象とした住居であるのに対し、有料老人ホームでは介護などもよく行われています。

サ高住の歴史はそれほど長くなく、2001年に施行され2011年に法改正が行われています。決して長い歴史は持っていませんが、それでも多くの人に受け入れられてきました。

この記事では

  • サ高住の種類
  • サ高住のメリットとデメリット
  • サ高住と有料老人ホームの違い
  • サ高住の入居にあたり必要になる費用
  • サ高住を選ぶときに見るべきポイント

などについて解説していきます。 終の棲家を検討するときの手助けとしてください。

この記事の目次

  1. サービス付き高齢者向け住宅は「一般型」と「介護型」の2種類ある
  2. サービス付き高齢者向け住宅への入居におすすめの人
  3. サービス付き高齢者向け住宅と登録できる住宅の基準
  4. サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違いを比較
  5. サービス付き高齢者向け住宅に住むメリット
  6. サービス付き高齢者向け住宅に住むデメリット
  7. 入居に必要な費用
  8. サービス付き高齢者向け住宅を選ぶときに見るべきポイント
  9. サービス付き高齢者向け住宅での暮らし方
  10. 申し込み~入居までの平均期間
  11. サービス付き高齢者向け住宅の退去条件
  12. まとめ
  13. 監修者コメント

サービス付き高齢者向け住宅は「一般型」と「介護型」の2種類ある

サ高住の種類

サービス付き高齢者向け住宅は、

  • 一般型サービス付き高齢者向け住宅
  • 介護サービス付き高齢者向け住宅

2種類に大別されます。

基本的に高齢者向け住宅は、「自立している比較的元気な高齢者」を対象とした住宅サービスです。

バリアフリー化がされており見守りサービスなどもありますが、原則として自分の身の回りの世話を自分でできる人を対象としています。基本的なサービスは「安否確認」と「生活相談」のみであり、それ以上のサービスを組み込むかどうかは施設によって異なります。

「介護施設」としての性質よりも、「サービスがついた高齢者向けの住宅」という性質の方が強く出ます。

それぞれどのような特徴があるのか、見ていきましょう。

一般型サービス付き高齢者向け住宅の特徴

「一般型サービス付き高齢者向け住宅」は、「自立して生活できる人向け」の住居をいいます。

元気なうちは自分たちで生活をします。ただし安否確認サービスなどがあるため、「まだ元気だが、1人で暮らし続けることには不安がある」という人にも使いやすい形態です。

一般的に、「サービス付き高齢者向け住宅」とだけ言うと、こちらの一般型サービス付き高齢者向け住宅を指すことが多いように思われます。

 一般型サービス付き高齢者向け住宅の場合、自立しているあるいは介護度が軽度にとどまる人を対象としています。ただ、介護が必要になった場合は訪問介護などを利用することはできます。外部の在宅介護サービスを利用して、介護を受けていくのです。

非常に重要な点ですが、一般型サービス付き高齢者向け住宅の場合は「内部の職員(スタッフ)による介護」は原則として受けません。

一般型サービス付き高齢者向け住宅の場合は、介護が必要になった場合は「外部の」サービスでサポートしていってもらう形式をとることになります。この点が、老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の大きな差異点にもなります。

介護型サービス付き高齢者向け住宅の特徴

「介護サービス付き高齢者向け住宅」は、厚生労働省によって「特定施設」として指定を受けたところだけが名乗ることのできるものです。

基本的にサービス付き高齢者向け住宅は自立~軽介護までの人を対象としていて、介護が必要になった場合は外部の介護サービスに頼ることになります。しかし介護型サービス付き高齢者向け住宅の場合は、施設内に常駐する職員による介護サービスを受けることができるのです。

一般型のサービス付き高齢者向け住宅の不安点を補うことのできるサービスなのですが、まとまった入居一時金が必要になったり、自炊が行えなかったりするなどの縛りもあります。一般型サービス付き高齢者向け住宅に比べると費用も割高になってしまいます。

また「介護型サービス付き高齢者向け住宅にする」と決めた場合、選択肢が狭まるおそれもあります。

ここでは特記しない限りは、サービス付き高齢者向け住宅=一般型サービス付き高齢者向け住宅であるとして解説を続けていきます。

次の章では、「サービス付き高齢者向け住宅を利用するのに適した人」を取り上げていきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅への入居におすすめの人

サービス付き高齢者向け住宅の丸・バツ・はてな

サービス付き高齢者向け住宅は、原則として「自分のことは自分でできる人向け」です。

そのため、サービス付き高齢者向け住宅入居がおすすめの人として、

  • 自分の身の回りのことは自分でできる人
  • 住居への支払いに余裕がある人
  • 自由に外出をしたい人

3つが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

自分の身の回りのことは自分でできる人

サービス付き高齢者向け住宅で提供されるサービスは、原則として「安否確認」「生活相談」のみです。施設によってはそれ以外のサービスも設けていますが、身の回りの世話は自分で行うことになります。

このため「介護施設に入らなければならないわけではないが、孤独死は避けたい」などのように考える人向けの選択肢です。

住居への支払いに余裕がある人

当然ですが、サービス付き高齢者向け住宅は一般的な住宅に比べて利用料金は高くなります。基本的には賃貸契約で入ることになりますし、このときの相場はまわりのアパートなどの賃貸費用に準じます。しかし、サービスがつけば当然、それだけお金が加算されるということです。そのため、住居にある程度お金が払える人向きです。

自由に外出をしたい人

サービス付き高齢者向け住宅は非常に自由度が高く、自由に外出もできますし自炊もできます。「まだ元気だし外出も好きなので、自由に生活したい」と考える人におすすめです。

「住宅」ですから、友人や家族などが自由に泊まりにくることもできます。

サービス付き高齢者向け住宅と登録できる住宅の基準

高級な有料老人ホーム外観

サービス付き高齢者向け住宅に登録することができる住宅は、県によってその基準が異なります。

たとえば愛知県の場合は、

  1. 高齢者向けの賃貸住宅や老人ホームで、賃貸住宅または構成する建築物ごと登録すること
  2. 入居要件者は60歳以上または要介護・要支援の認定を受けている60歳未満の人と、その同居者(配偶者や親族)
  3. 医療法人や社会福祉法人、医師や看護師、介護福祉士などが夜間を除いて、隣接する土地に常駐できること。また状況を把握したり、生活相談サービスをできたりする環境が整っていること。また、いない時間帯の場合は通報装置によって対応できるようにすること。
  4. 「書面による契約」「居住部分が目辞されていること」「敷金・家賃以外の権利金などは受け取らない契約であること。また、前原井にする場合はその算定方法が明示されていること」「特定の要件を満たした場合を除き、前金を返還する契約であること」「入居者の環境が変化しても、事業者が契約を解約したリ変更したりできないこと」「工事が終わる前に前金を受け取らないこと」「前払いの場合は、国が定める保全措置が取られること」

などの条件があります。

詳細に関しては各都道府県の記事をあたる必要があります。ただ、サービス付き高齢者向け住宅は入居者側に対して極端な負担を強いないような決まりを設けています。これをクリアしないと、サービス付き高齢者向け住宅に登録はできません。

サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違いを比較

車いすに座っている老婆と向き合う介護士

サービス付き高齢者向け住宅は、しばしば有料老人ホームと並んで語られます。どちらも高齢者を対象としており、長期間にわたって住み続けることが前提となるという点では共通しています。

ただしこの2つには、大きな違いもあります。サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームは基本的な性質が異なるので、この点について解説していきます。

特に違いが大きいのは、以下の3点です。

  • 住民となる対象者
  • 受けられるサービス内容
  • 契約時の支払い

それぞれ見ていきましょう。

なおここでは原則として「一般型サービス付き高齢者向け住宅」を対象としてお話ししていきます。また老人ホームは、介護付き老人ホームを想定しています。

住民となる対象者

  • サービス付き高齢者向け住宅・・・基本的には「自立して生活できる人、もしくは介護度が軽微な人」を対象としています。介護型サービス付き高齢者向け住宅の場合はその限りではありませんが、一般型サービス付き高齢者向け住宅の場合は自分のことは自分でできる……という人を対象者としていることが多いといえます。このためサービス付き高齢者向け住宅は自由度が高いのです。
  • 一般的な老人ホーム・・・介護が必要な人を対象としています。サービス付き高齢者向け住宅の場合はスタッフの常駐は義務ではありませんが、老人ホームの場合は国の定める「配置基準」によって夜間も介護職員や看護職員を置かなければならないとしています。

サービス付き高齢者向け住宅の場合で「自立して生活できる人」を入居者の条件と定めている場合、体調が悪化したり要介護度が進行したりした場合は済み続けるのが難しくなる可能性もあります。介護を前提とする老人ホームの場合は、基本的には長く住み続けられますことが多いといえます。

現在は「介護にも対応できる」としているサービス付き高齢者向け住宅もみられますが、この「対象者の違い」は非常に大きなポイントです。

受けられるサービス内容

受けられるサービスの内容も異なります。

  • サービス付き高齢者向け住宅(原則として)・・・「入居者の安全確認」「生活の相談」を受けることを基本とします。生活支援や介護を行うサービス付き高齢者向け住宅もありますが、「自立した生活をすること」を基本としているのです。また、サービス付き高齢者向け住宅で介護が必要になったときには、原則として外部に介護を委託し、在宅の状態で介護を受けられる状況を整える必要があります。
  • 老人ホームの場合・・・介護を前提とします。そのため、食事や排せつ、入浴の補助などが行われます。サービス付き高齢者向け住宅の場合は自炊を行うケースもありますが、老人ホームの場合は食事も出てきます(簡単な選択制をとることはあります)。またリハビリテーションやレクリエーションなども行われ、介護も老人ホーム内で完結することが多いといえます。

サービス付き高齢者向け住宅の場合は、入居前に「介護が必要になったらどうする(どうなる)のか」をしっかりと確認しておく必要があります。その理由が、この「受けられるサービスの違い」にあります。

契約方法

サービス付き高齢者向け住宅と老人ホームでは契約形態にも違いがみられます。

  • サービス付き高齢者向け住宅・・・契約はあくまで「賃貸契約」です。物件を借りているだけであり、利用者と運営者の間では「住宅を貸す契約」「住宅を借りる契約」のみが締結されることになります。これもあり、介護が必要になったときは外部の介護サービスとの間で再度契約を結ぶ必要が出てくるのです。
  • 老人ホームの場合・・・「利用権方式」の契約形態をとることになります。これは単純に「その施設に住む権利」だけを担保するものではありません。済む権利はもちろん、その施設を利用する権利や、介護などのサービスを受けるための権利も含まれます。特に注目したいのは、この「介護などのサービスを受けるための権利」です。

老人ホームとの契約の場合は、その老人ホームに常駐する介護スタッフから介護を受けるための権利も買うことになるわけです。そのため、原則として老人ホームの場合は介護を受けるときに別料金がかかる……といったことはありません。

これは「毎月の出費」に直接的につながるところなので、頭に入れておきましょう。

 

住民となる対象者受けられるサービス内容契約方法国からの控除や還付金
サービス付き高齢者向け住宅基本的には自立している人、また介護度が低い人安否確認サービスや生活相談などが基本。ただし施設によって違いがある賃貸借方式サービス付き高齢者向け住宅はあくまで「住宅」であるため、医療費控除の対象とはならない
有料老人ホーム介護を必要とする人も入ることができる入浴や排せつ、食事の介護などの介護サービスも受けられる。介護職員常駐利用権方式老人ホームの形態によっては医療費控除が受けられる(特別養護老人ホームなど)。2分の1までが医療費控除の対象となる。ただし有料老人ホームではこの限りではない

なお、サービス付き高齢者向け住宅にしろ有料老人ホームにしろ、その形態はさらに細分化されています。このため、受けられるサービスや控除についても形態ごと・施設ごとで違いがみられます。入居を決める前には必ず、その施設の特徴について確認しましょう。

サービス付き高齢者向け住宅に住むメリット

折り紙でできた毬と作る人たち

サービス付き高齢者向け住宅にはさまざまなメリットとデメリットがあります。まずメリットについて取り上げましょう。

  1. 自由度が高い
  2. 必要なサービスを必要な分だけ受けられる
  3. 有料老人ホームに比べて初期費用が抑えられる。
  4. 選択肢が広い

1.自由度が高い

サービス付き高齢者向け住宅は入居施設というよりも「賃貸物件」としての性質が強いものです。そのため外出は自由ですし、人を泊めることもできます。多くのサービス付き高齢者向け住宅では自炊も可能になっており、有料老人ホームよりも自由度がはるかに高いのが魅力です。

2.必要なサービスを必要な分だけ受けられる

有料老人ホームに比べて介護サービスの充実度では劣るサービス付き高齢者向け住宅ですが、自分が必要とするサービスを選択肢して受けられるというメリットがあります。食事についても「自炊することもできるが外注することもできる」としているところが多く、自由にカスタマイズできる範囲が非常に広いといえます。

3.有料老人ホームに比べて初期費用が抑えられる。

サービス付き高齢者向け住宅は「賃貸物件」としての性格を強く持つため、有料老人ホームに比べて初期費用は抑えられやすい傾向にあります、

4.選択肢が広い

さまざまな会社が参入している住宅形態であるため、選択肢が広いのも魅力です。なおサービス付き高齢者向け住宅はもともと高齢者を対象としているため、高齢を理由に入居を拒まれることはありません。

サービス付き高齢者向け住宅に住むデメリット

サービス付き高齢者向け住宅にはデメリットもあります。それについてみていきましょう。

  1. 重度の介護状態になった場合、住み続けるのが難しいケースもある
  2. 施設によってサービスに大きな違いがみられる
  3. 割高になることもある 

1.重度の介護状態になった場合、住み続けるのが難しいケースもある

サービス付き高齢者向け住宅のなかには「介護度が人でも受け入れられます」としているところもありますが、基本的にはある程度自立している人のための住居です。そのため症状が悪化していくと、サービス付き高齢者向け住宅にそのまま住み続けることが難しくなり退去を打診される可能性もあります。そのため、このような状態になったときにはまた新たな住まいを探さなければならなくなります。

2.施設によってサービスに大きな違いがみられる

サービス付き高齢者向け住宅は「見守りサービス」「生活相談サービス」などのサービスが設けられていますが、それ以上のサービスになると、サービス付き高齢者向け住宅それぞれの判断にゆだねられます。そのため、非常にサービスが充実している施設もある一方で、あまりサービスが充実していないところもあります。

3.割高になることもある

サービス付き高齢者向け住宅は、介護が必要になった場合は外部に委託するのが前提です。「介護込みでこの値段」としている有料老人ホームとは異なり、介護が多く必要になった場合は割高になる可能性もあります。

入居に必要な費用

電卓で計算する手

サービス付き高齢者向け住宅の費用は、一般型か介護型かで変わります。ここでは基本的には一般型の特徴のみを取り上げてきましたが、ここでは介護型も取り上げます。

【一般型】

初期費用:敷金としての金額のみ。高くても数十万円程度まで。

月額費用:5万円~25万円程度としているところが多い。
(そのサービス付き高齢者向け住宅が建っているところの地価・家賃相場に準じる。サービス付き高齢者向け住宅は広くスペースが設けられるため少し高めにはなる)

【介護型】

初期費用:数十万円~数百万円

月額費用:15万円~40万円程度 

このように、同じ「サービス付き高齢者向け住宅」といっても、一般型か介護型かで費用は大きく異なります。「サービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームよりも安い」とされているのは、「一般型のサービス付き高齢者向け住宅」と有料老人ホームを比較したときの話です。

有料老人ホームの場合は、月額の利用料金は介護型のサービス付き高齢者向け住宅とほとんど変わりません。初期費用の面で有料老人ホームと介護型サービス付き高齢者向け住宅を比べた場合は、「有料老人ホームの方が高くなることもあるが、介護型サービス付き高齢者向け住宅の方が高くなることもある」となります。

サービス付き高齢者向け住宅を検討するのであれば、「一般型か、それとも介護型か」をしっかりと分けて考えなければなりません。特に費用面ではこの判断が大きな意味を持ちます。

なぜならサービス付き高齢者向け住宅が、近年非常に多く提案・提供されるようになったものだからです。これには、国からの補助金が関係しています。

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の受け入れ先として国が注目している分野です。このような補助金や税制面での優遇措置がとられているおかげで、サービス付き高齢者向け住宅は非常に増えました。

この「税制面の優遇」は、利用者にとってはあまり関係のないものに思えるかもしれません。しかし多くのサービス付き高齢者向け住宅が建設されればそれだけ選択肢が増えますし、自分にあったところを選びやすくなるというメリットがあります。

ここからは実際にサービス付き高齢者向け住宅を選ぶときに見るべきポイントについてみていきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅を選ぶときに見るべきポイント

終活カウンセラー

「サービス付き高齢者向け住宅を選ぶと決めた場合で、かつどこのサービス付き高齢者向け住宅にしようか迷っている」というときに非常に重要になってくるポイントです。またこれらを検討していくうちに「やはりサービス付き高齢者向け住宅ではなく、有料老人ホームの方がよさそうだ」「ほかの選択肢を探したくなった」などのように考え方が変わることもあるでしょう。

  1. 住宅の規模
  2. 食事の提供方法
  3. スタッフの保有資格とその内容
  4. 医療機関との連携

この4つをチェックポイントとして取り上げます。

ここでは主にチェック項目のみを取り上げていますが、契約の前には実際に自分で足を運んでサービス付き高齢者向け住宅の様子を知ることも重要です。カタログだけでは見えてこないことも、実際に現地に行けば見えてくることもあるからです。

住宅の規模

サービス付き高齢者向け住宅は、ある程度長期間住み続けることになることを前提としているものです。ここを最後の住処とする……という人もいるでしょう。

そのため、「住宅の規模や設備」は非常に重要になってきます。当然広い方が良い、明るい居室で新しい部屋の居心地の方が良いでしょう。ただこのようなサービス付き高齢者向け住宅は当然費用も高くなりがちですから、このあたりのバランスをうまくとらなければなりません。

また、「共有部分はどうなっているのか、どれくらいの広さなのか、何が共有されているのか」もきちんと見ておく必要があります。長く住むことになりますから、娯楽スペースなどのチェックも重要です。衛生環境がきちんとしているか、清潔な空間であるか、日当たりはどうかなどもチェックしましょう。

住宅の規模や雰囲気は、写真だけを見ていてもなかなか把握できません。写真は大きな手掛かりとはなりますが、当然良く見えるように写真を撮っていますし、部屋の広さは実際に足を運んでみなければ感覚としてつかみにくいといえます。「サービス付き高齢者向け住宅に契約前に足を運ぶべき一番の理由」は、この「部屋の規模や雰囲気を見ること」かもしれません。

食事の提供方法

食事は非常に重要です。サービス付き高齢者向け住宅に入居する年齢は人によって異なりますが、ケースによっては20年以上住み続けることになります。そして食事は毎日3食とることになるものです。

サービス付き高齢者向け住宅の食事形態はさまざまです。

自炊することができる一方、食堂などで料理が出される形態をとるところもあります。自室にキッチンがついているタイプもあれば、台所は共有になっているケースもあります。また食事が出されるタイプのサービス付き高齢者向け住宅の場合、一流のシェフによる食事や療養食、イベント食(お節料理やバイキングなど)に対応しているところもあれば、そうではないケースもあります。サービス付き高齢者向け住宅のなかには、「上質な食事を出すこと」をそのサービス付き高齢者向け住宅のもっとも大きな魅力として打ち出しているところさえあります。

サービス付き高齢者向け住宅の場合は

  • 食事の提供方法
  • キッチンのあり方
  • 食事のクオリティ

が施設によって大きく異なります。

料理や食事に関心がある人とそうではない人の間では食事の重要度や相性のよい提供方法が異なってくるので、このあたりもチェックしておくとよいでしょう。

スタッフの保有資格とその内容

車いすに乗った高齢の女性と医師と介護士

サービス付き高齢者向け住宅に入る場合は、そこのサービス付き高齢者向け住宅で働くスタッフの保有資格についても見ておきたいものです。

「サービス付き高齢者向け住宅 未経験」などで検索すると多数の求人情報がヒットします。つまりサービス付き高齢者向け住宅のスタッフのなかには、無資格で、かつ未経験の人もいます。

その一方で、介護付きのサービス付き高齢者向け住宅の場合は介護士の資格を持っている人が活躍している現状があります。また高級なサービス付き高齢者向け住宅などの場合は、看護師資格を持ったスタッフが勤務している場合もあります。「24時間体制で、看護師が常駐していること」を売りにしているサービス付き高齢者向け住宅もあるほどです。

サービス付き高齢者向け住宅の性質上「スタッフが無資格ならば、その施設は悪い施設だ」とまでは言い切ることはできません。サービス付き高齢者向け住宅に求められる最低限のラインは「見守り」「生活相談」だからです。

ただ将来にわたって住み続けることが前提となること、人は介護を必要な状況に陥ることもあることを考えれば、スタッフの保有資格はチェックしておくべき事柄のうちのひとつだといえるでしょう。

病院などとの連携について

病院と連携しているかどうかも非常に重要です。

何度か繰り返していますが、サービス付き高齢者向け住宅の場合は介護に対応していないこともあります。平成25年にとられたアンケートではサービス付き高齢者向け住宅を退去した一番の理由として「医療的ケアニーズの高まり」があげられており、これが半数近くを占めています。

医療機関と連携をとっていない場合、医療的なケアニーズが高まった場合に、うまく対処しきれなくなる可能性が高くなります。また、サービス付き高齢者向け住宅では対応ができなくなって退去した場合、再度医療機関を探さなければならないというデメリットもあります。

ただし「医療機関と連携しているサービス付き高齢者向け住宅」も、その内容は施設ごとによって大きな違いがあります。そのため施設に入るときは、どのようなかたちで連携しているのか、連携しているとしているがその文言が形骸化していないかなども見ておくようにしましょう。

なお医療機関と連携しているサービス付き高齢者向け住宅は、多くの場合それをサイトなどに記載しています。記載がない場合は、この点について確認しておいてください。

次の項では施設での過ごし方を紹介します。


出典:平成25年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業「平成25年度 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査」(57ページ)https://www.yurokyo.or.jp/kakodata/investigate/pdf/report_h25_01_02.pdf

サービス付き高齢者向け住宅での暮らし方

介護施設、老人ホーム

サービス付き高齢者向け住宅は、基本的なサービス以外にもさまざまなサービスを設けていることが多いといえます。

そのなかでも、入居者の生活に大きく関わってくるのは

  • 1人部屋か、それとも2人部屋か
  • レクリエーションなどが行われているか
  • リハビリテーションについての考え方
  • 食事

でしょう。

ここでは、先に挙げた食事以外の3要点について解説していきます。

1人部屋か、2人部屋か

「夫婦2人で持ち家で過ごしていたが、引退もしたので家を処分し、サービス付き高齢者向け住宅に移り住みたい」と考える人の数は、決して少なくはありません。

基本的にはサービス付き高齢者向け住宅でも、有料老人ホームでも配偶者と2人で住むことができるようになっているところが多いといえます。

なお、多くのサービス付き高齢者向け住宅は「配偶者とならば住むことができる」としていますが、「事実婚でもOK」「2親等以内ならばいっしょに入ることができる」としているところも多いといえます。事実婚/2親等の表記がないところであっても、問い合わせることで見解を教えてもらうことができるので、必要な状況ならば一度聞いてみるとよいでしょう。

なお同性同士でのパートナーの場合は、「単身高齢者」として扱われるとして問題視する声もあります。該当する場合はこのあたりも意識しておきたいものです。

なおサービス付き高齢者向け住宅は介護施設ではなくあくまで「住宅」なので、友人や家族が泊まりにくることは基本的には問題ありません。ただ、「泊まるのはOKだが、事前に常駐のスタッフに連絡をしてほしい」としているところもあります。

サービス付き高齢者向け住宅とレクリエーション

介護施設でのレクリエーション時間の風景

「どのように暮らしたいか」は人によって異なります。「老後だからこそ静かに暮らしたい」という人もいますが、レクリエーションを積極的に取り組みたいと考える人もいるでしょう。また、レクリエーション(特に自分で選択ができるもの)に取り組むことで認知症が予防されるといわれています。

サービス付き高齢者向け住宅で新しい趣味を見つけるために、レクリエーションを積極的に行っているところを選ぶのもよいでしょう。なかには毎日レクリエーションを行っているサービス付き高齢者向け住宅もあります。

サービス付き高齢者向け住宅で行われているレクリエーションの内容は多岐に及んでおり、手芸やフラワーアレンジメント、カラオケや体操など、実にさまざまです。

多くの施設では「レクリエーションは無料で行える」としているので、気になるものをやっているサービス付き高齢者向け住宅を選ぶのもいいかもしれません。

ちなみに、園芸などのように外で行うレクリエーションもあります。施設によっては入居者に畑を貸し出していたり、「仕事」として有償で作物を育てる試みを推進したりしている高齢者施設などもあります(詳しくは施設に確認をしてください)。

参考:マンガで分かる心療内科4|ゆうきゆう・ソウP86

サービス付き高齢者向け住宅とリハビリ

サービス付き高齢者向け住宅に入居している場合「訪問リハビリテーション」というかたちでリハビリを受けることもできますが、サービス付き高齢者向け住宅が主体となってリハビリサービスを行っているケースもあります。たとえば理学療法士などの指導に基づいてリハビリを進めていけるようになっているのです。

なお、理学療法士(大きな動きのリハビリを行う専門家)をメインとしているサービス付き高齢者向け住宅が多いのですが、作業療法士(小さな動きのリハビリを行う専門家)や言語聴覚士(言葉のリハビリを行う専門家)によるリハビリを打ち出しているところもあります。

サービス付き高齢者向け住宅のなかには、リハビリのための部屋を設けているところも多く見られます。

またこのようなリハビリ付きのサービス付き高齢者向け住宅の場合、そのほとんどで、「介護にも対応している」としています。このため、「一般型のサービス付き高齢者向け住宅」というよりも、「介護型のサービス付き高齢者向け住宅」としての性質の方が強く出てくることになります。また、リハビリを行えるサービス付き高齢者向け住宅のなかには看護師が常駐している施設もあります。

申し込み~入居までの平均期間

時計とカレンダー

サービス付き高齢者向け住宅は、現在は飽和状態にあるといわれています。そのため利用者側から見た場合は、「選択肢が広く、かつ待機期間がとても短い状態」だといえます。

もちろん人気のサービス付き高齢者向け住宅の場合はこの限りではありませんが、比較的スムーズに入居までたどり着けます。

サービス付き高齢者向け住宅に申し込むときの手順は、以下の通りです。

  1. 資料を集めて、候補となるサービス付き高齢者向け住宅を絞り込む。退去条件などをチェックする
  2. 絞り込みが終わったら、住宅の見学を申し入れる
  3. 質問事項をとりまとめ、回答を待つ
  4. 納得のいく回答が得られ、かつそのサービス付き高齢者向け住宅で良いと決まったのならば申し込みを行う
  5. 申し込みが終わったら、施設側と利用者の間で面談が行われる(面談の結果入居を断られる場合もある)
  6. 検討し、入居の可否の連絡が行われる
  7. 入居の契約を締結する
  8. 入居のためのお金を支払う(家賃3か月分+翌月の利用料など)
  9. 入居

「現在住んでいる家をそのままにしておく」「家族と一緒に住んでいる」という場合、入居までの期間はより短くなるでしょう。しかし「今の住居を処分する」などの場合は、家の整理もありますから時間はかかります。

施設側にも「いつから入居ができるか」「現在はこのような状態だが大丈夫か」と確認するようにしてください。利用者―利用者の家族―施設の三方で、状況を共有することは非常に重要です。

サービス付き高齢者向け住宅の退去条件

チェックリストと赤ペン

サービス付き高齢者向け住宅は終の住処となりうるところではありますが、状況によっては退去しなければならない状況になることもあります。

その理由としてよく上げられるのが、以下の3つです。

  • 体調の悪化
  • 金銭面の問題
  • 迷惑行為

それぞれ見ていきましょう。

一般型のサービス付き高齢者向け住宅の場合、体調が悪化して医療的ケアが必要になった場合や介護度が重くなった場合は住み続けられなくなることもあります。

金銭面の問題

「月額で利用料を払っていたが、お金が続かなくなった」などのような金銭的な理由を原因として、退去せざるを得なくなることもあります。

また一般型のサービス付き高齢者向け住宅の場合、介護が必要になると外部に介護を依頼することになります。この「外部に依頼するためにかかる介護費用」が大きな金銭的な負担となってのしかかることもあります。金銭計画をしっかり練っておく必要があります。

迷惑行為

サービス付き高齢者向け住宅は個々の自由やプライバシーが尊重される選択肢ではありますが、同時に、「サービス付き高齢者向け住宅」というひとつの建物に多くの人が住む住居形態でもあります。このため著しい迷惑行為があったり、また注意されても改められなかったりした場合、ほかの居住者のために退去を求められることもあります。

もっともこれらは、体調不良のものを除き、一般の賃貸住宅でも退去事由にあたることだといえます。

まとめ

サービス付き高齢者向け住宅は、「サ高住」とも呼ばれるもので、高齢者のための施設です。 

▽サービス付き高齢者向け住宅には2種類ある

  • 見守りと生活相談が中心となる一般型サービス付き高齢者向け住宅(今回メインに取り上げたのはこちら)
  • 介護付きのサービス付き高齢者向け住宅
  • サービス付き高齢者向け住宅は高齢者が入居することを前提としたもので、バリアフリー化が進んでいる
  • 費用は近隣の賃貸住宅に準じる

▽サービス付き高齢者向け住宅に向く人

  • ある程度自由に動きたい人
  • 金銭的余裕がある人
  • 一般型サービス付き高齢者向け住宅の場合は、介護度が重くない人

▽老人ホームとの違い

 

住民となる対象者

受けられるサービス内容

契約方法

国からの控除や還付金

サービス付き高齢者向け住宅

基本的には自立している人、また介護度が低い人

安否確認サービスや生活相談などが基本。ただし施設によって違いがある

賃貸借方式

サービス付き高齢者向け住宅はあくまで「住宅」であるため、医療費控除の対象とはならない

老人ホーム

介護を必要とする人も入ることができる

入浴や排せつ、食事の介護などの介護サービスも受けられる。介護職員常駐

利用権方式

老人ホームの形態によっては医療費控除が受けられる(特別養護老人ホームなど)。2分の1までが医療費控除の対象となる。ただし有料老人ホームではこの限りではない

▽サービス付き高齢者向け住宅のメリット

  1. 自由度が高い
  2. 必要なサービスを必要な分だけ受けられる
  3. 有料老人ホームに比べて初期費用が抑えられる。
  4. 選択肢が広い

▽サービス付き高齢者向け住宅のデメリット

  1. 重度の介護状態になった場合、住み続けるのが難しいケースもある
  2. 施設によってサービスに大きな違いがみられる
  3. 割高になることもある

▽サービス付き高齢者向け住宅を選ぶときのポイント

  • 住居の規模
  • 食事
  • スタッフの保有資格
  • 病院と連携しているか
  • レクリエーションが充実しているか
  • リハビリを行っているかどうか

▽サービス付き高齢者向け住宅の退去事由

  • 介護や医療ケアが必要になった
  • 金銭的な問題
  • 迷惑行為


サービス付き高齢者向け住宅は、国が積極的に後押ししてきたものです。税制面の優遇もあり、現在は非常に選択肢が増えています。

自分に合うところを選びやすくもなっていますから、「終の住処候補」として選択肢に入れておくことをおすすめします

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

「介護施設は安心だけど、集団生活は苦手」「自炊や外食もしたい、起床や就寝時間も自分のスタイルを維持したい」と自分らしい生活を望む人は、高齢者施設の中でもサ高住が向いているのではないでしょうか。介護度が高くなると難しいのでは、と心配される人もいますが、訪問系の介護サービスをうまく活用することで、最期まで自分らしい生活をすることもできます。サ高住は、安否確認と生活相談サービスを必須としていますが、その他はそれぞれの施設によって異なります。大衆向けもあれば高級路線もあります。独自のサービスを展開しているので、比較検討してみてはいかがでしょうか。

老後のお金・介護の基礎知識を解説