香典の辞退をする人とは?理由と失礼のない対応法

数珠と仏花とグレーの不祝儀袋

「香典」は、葬式関係のことを調べていくときに必ず目にする単語です。
また、「どれくらい包めばいいの?」「表書きは?」と悩む人が多い事柄でもあります。
しかし近年、この「香典」を辞退する人(家庭)もいます。

香典を辞退したいと考えている人に、そして香典を辞退された立場になった人のために、「香典辞退」という言葉に焦点をあててお話ししていきます。

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この記事の目次

  1. 香典とは
  2. 香典辞退とは
  3. 香典を辞退すると決める前に考えること~喪家側
  4. 香典辞退の旨を伝える方法とタイミング
  5. 香典辞退を伝えたが、香典を受け取った場合の対応
  6. 香典を辞退する旨を受けた場合の対応方法~参列者側
  7. 香典辞退の旨を受け、供物や供花を贈るときに気をつけること
  8. この記事のまとめ
  9. 監修者コメント

香典とは

香典とは、亡くなった人の前にお供えするためのお金のことです。元々は「お香」からきている言葉です。

昔のお香は質が悪く、長持ちしませんでした。しかしご遺体の傍では一晩中お香をたき続けていなければいけません
※なお、「なぜ一晩中お香が必要か」については、「腐敗臭を紛らわすためだった」「亡くなった方の食べ物である」という説があります。ただこれも一説にすぎず、「これが正しい解釈だ」ともなかなか言い切ることはできません。

このため、近所や親戚の人がお香を持ち寄ったとされています。

ただ、時代を経るに従い、お香はより長持ちし、より質のよいものへと変化していきました。そのため、持続時間もずっと長くなりました。このため、「お香の代わりに金銭を持ち寄ろう」という考え方が出てきました。

現在では、「何かとお金がかかる葬儀の場面においての相互扶助」という考え方が主流です。

水引の色には地域差(かたちは結び切りのみ)が、表書きには宗教・宗派の違いが見られますが、一般的には「双銀もしくは白黒の水引を使う。どの宗教・宗派であっても、『御霊前』という言い回しが使える」とされています。

香典についてより詳しく知りたい人は、下記の記事を参考にしてください。

香典辞退とは

「葬儀はお金がかかるので、それに対しての金銭面の補佐」という考えが当たり前になってきた「香典」。しかし、この香典を受け取らない「香典辞退」というスタイルを取る喪家(もけ。葬家とも。家族を亡くした家のこと)もあります。

この「香典辞退」について考えていきましょう。

香典辞退は増えている?

香典辞退が増えているかどうかについては、なかなか一概に言うことができません。

しかし高齢化が進み「亡くなった人だけでなく、喪主も加齢とともに人付き合いが減っている。参列者も少ないし、大きな葬儀にはしないので香典辞退というかたちにしたい」と考える向きはあります。

また、葬儀のスタイルも多様化しているため、よりその人にあった葬儀ができるようになっています。
なかには生前から、「自分の葬儀のときにはできるだけお金をかけてほしくない。香典などもまったくいらない」という意思表明をしている人もいます。

ちなみに、「シンプルなお葬式」が出しているデータでは、約2割の家庭が「香典辞退をする」としています。

出展:シンプルなお葬式「意識調査「2割が香典辞退」―香典よりも「小規模な葬儀を」

香典を辞退すると決める前に考えること~喪家側

「香典辞退」を考えるとき、「どちらの立場に立つか」ということを明確にしておかなければ正しい情報が得られません。つまり、「香典辞退をする側(喪家側)」か、「香典辞退をされた側(参列者側)」かということです。

まずは喪家側の方から考えていきましょう。

「香典」は、葬儀には欠かすことのできないものだと考えられています。そのため、明確に「いらない」ということをきちんと案内しなければなりません。

一般的には、訃報の連絡をするときにその旨を伝えることになります。葬儀の案内状に、「御香典は固く辞退申し上げます」などと記すようにしましょう。

葬儀の当日に受付で案内する方法もあります。この場合は、「香典を辞退する」という旨を記した看板を設置しておいたうえで、口頭で説明をすることになるでしょう。

ただ、「香典は葬儀に持っていくものだ」という考え方がスタンダードであるため、参列者の方をとまどわせる可能性はあります。

このため、お断りをする際は「故人の意向だった」ということをお断りの理由にした方が受け入れられやすいかもしれません。

また、「香典辞退をするか、しないか」ということは、ご家族でしっかり話し合っておいてください。葬式の場面というのはだれもが非常にナイーブになっているものですし、それぞれの「常識」がぶつかり合う可能性の高いものでもあります。

ご家族のなかで考え方を統一しておかなければ、のちのちもめる原因になりかねません。

香典辞退の旨を伝える方法とタイミング

香典辞退を伝えるタイミングは、葬儀のお知らせのタイミングもしくは受け付けでのタイミングです。

ただ、親族の方にはあらかじめ伝えておいた方がよいでしょう。電話をする機会があるのであれば、その時にも一度念を押しておいた方がいいかもしれません。

「香典辞退」ということを家族の間で決めていたとしても、参列者の多くは香典を持参します。また、香典辞退を受けると逆にとまどうという人が大半であるため、この点についての配慮と案内は絶対に必要です。

香典辞退を伝えたが、香典を受け取った場合の対応

香典辞退を表明していても、香典を受け取ってしまうことは比較的よくあります。

たとえば、その場では受け取らなくても、その後で家に弔問に来てくれた人が香典を持ってきてくれたり、忌引きが終わった後に出社したら部内の人から渡されたり……というようなケースです。こういったケースでの「正解」はありません。

基本的には「香典辞退」の意向を伝えているため香典返しは必要ない、とされています。ただ、やはり、頂きっぱなしというのはちょっと……ということで、なんらかの対応をしたいと考える人もいるでしょう。

このような場合、金額が大きくかつ個人からの香典であるのであれば、いただいた額の半額程度の香典返しを包んでお返しするのがおすすめです。香典返しをするタイミングは四十九日法要後となるでしょう。

ただ、職場の有志から少しずつお金を出して渡されたという香典の場合は、みんなで食べられるお菓子などをお持ちするのもよいでしょう。

ちなみに、香典返しは本来四十九日法要の後にお渡しするものでした。このときは、今回の「香典辞退」のときと同じく、いただいた金額の3分の1~2分の1程度のものをお渡しするやり方がとられていました。

しかし現在では、香典返しのためにわざわざ来訪するという習慣はほぼすたれており(金額が極めて大きい場合などはこの限りではりません)、通夜や葬式のときに来てくださった方に受付で香典を受け取った際に、一律でお返しする「当日返し」のスタイルがとられるようになりました。

ただ、香典辞退をしている家庭の場合、そもそも香典返しの手配をしていないというケースもよくあります。また、個別でお渡しされることが中心となるため、このように「それぞれの金額にあわせた半返し」というかたちがとられるのが一般的です。

「香典辞退」というややイレギュラーなスタイルであるのに、「本来のかたちでの香典返し」が行われるという逆転現象が起こっているのは、少し興味深い話ですね。

香典を辞退する旨を受けた場合の対応方法~参列者側

さて、ここまでは「香典辞退をする側」の立場からお話してきましたが、ここからは「香典辞退をされた側」の立場(参列者側)に立ってお話をしていきましょう。

「香典辞退」と言われた場合の意味

香典辞退をする理由というのは、その家庭・その家庭でそれぞれ違います。
ただ、「小さなお葬式」のデータでは、「お返しが大変だから」という意見がもっとも上位に来ています(33.3パーセント)
また、2位が「参列者に負担をかけたくない」で25.8パーセント、3位は「家族だけで負担したい」が16.1パーセントです。

また、「香典辞退をするならば、葬儀は小さいものでよいと思う」と答えた人は95.1パーセントにのぼっています。

「できるだけ小さなお式にしたい」「香典返しの大変さが煩わしい」「参列者のお気持ちだけで十分だ」というのがご遺族のご意向だと考えれば、「香典をお渡しすることが逆にご遺族にとって負担になる」ということになるのかもしれません。

「供花・供物はお断り」と言われた場合の意味

香典辞退をされた場合、供花や供物で弔意を表明するという方法もあります。高くても15,000円程度で収まるため、ご家族の心理的な抵抗感も少ないだろうと考えることもできます。実際、香典辞退をしていても、供花や供物は受け取るという喪家もあります。

「香典辞退」とのみ書かれているのであれば、これを贈ることを考えてもよいでしょう。

しかし香典辞退をする喪家の場合、この供花や供物も辞退される家庭も多く見られます。

このような場合は、当然供花・供物をお贈りするのも控えましょう。一切の負担を強いたくないという心持ちであったり、そもそも会場が非常に狭くて(特に家での葬式の場合)スペースが確保できないといった問題を抱えていたりすることもあります。

「ご厚志お断り」と言われた場合の意味

「ご厚志お断り」とある場合は、「香典も供花も供物もすべてお断りさせていただきます」という意味だと解釈してください。

香典辞退の旨を受け、供物や供花を贈るときに気をつけること

供物や供花を贈る場合は、まずは贈っていいかどうかの確認を行うことが必要です。

諸説ありますが、葬儀社に尋ねた方が安全です。飾るスペースの問題もありますし、「『香典辞退』としか書いていなかったが、『ご厚志お断り』の意味だった」ということもあるかもしれません。自己判断で贈ることは控えましょう。

花は、基本的には白色などのおとなしいカラーを中心として選びます。また、宗教ごとに重んじられる花も違いますが(仏教では菊、キリスト教では百合)、このあたりは葬儀会社や花屋の手配に任せてもよいでしょう。

ただ、極めて親しい相手でありご家族とも親しく付き合っていたという場合は、多少華やかな色・華やかな種類であっても、故人の好きな花でつくる供花の場合は許容されることもあります。(あくまで特別な例であるため、強くはおすすめできません)

金額は5,000円~15,000円程度が相場ですが、多くの場合、10,000円もしくは15,000円のプランが取り入れられます。

この記事のまとめ

ここがポイント

  • 現在は2割の家庭が香典辞退を選択している
  • 喪家側であるのなら、きちんと香典辞退の意向を伝えることが大切
  • それでも香典をいただいたのなら、半返しもしくは菓子折りでお返しする
  • 参列者として参加する場合は、ご遺族の気持ちを最大限尊重する
  • 香典辞退と言われたのなら香典は持って行かない。供花や供物は可。葬儀社に確認する
  • 「ご厚志お断り」ならば供花や供物も贈らない

このような点を意識して、「香典辞退」に向き合っていきましょう。

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

近年、特に関西を中心に「香典辞退」とするケースが増えています。

日本には冠婚葬祭シーン、誕生日、お年玉など、金封をおくる文化があり、そのひとつが香典なのですが、葬儀に対する意識の変化や地域コミュニティの変化などを背景に家族葬や直葬が増え、また返礼のわずらわしさもあって香典辞退とするほうが合理的だと捉える人が増えています。

ただし、この流れは全国一律ではありませんので注意が必要です。
そもそも葬儀は地域によってやり方や手順が異なるものです。

香典の文化や返礼の文化も異なりますから、「香典辞退」と考えていても、その地域の事情に精通した寺院や葬儀社にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

墓じまいを検討されている方

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  • 墓じまいにいくら必要なのか知りたい

親族や知人などに墓じまいを経験した人がおらず、不安に感じる人もいるかと思います。
また、今あるお墓を片付けることに抵抗感がある方もいるかもしれません。
しかし、大切なのはお墓をきちんと片付け、あとの供養に繋げていくことです。

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