墓地の所有権は個人ではない!お墓の土地は霊園から借りている場所
墓地の所有権とは?徹底解説
- お墓の土地は霊園からの借地で、所有権はない。
- 永代使用権を取得し、お墓を建てる。譲渡は基本できない。
- 墓守死去時は名義変更のため霊園に連絡が必要。
- 墓地・霊園の規則は各地で異なるため、契約前の確認が重要。
「お墓を建てよう」と決心した場合は、どの場所に建ててよいものなのでしょうか。
お墓を建てる場所は、法律で決められた墓地以外に建てることができません。
そのため、お墓を建てたい場合は、お墓を建てるための墓地を探す必要があるのです。
しかし、墓地はどうやって探せばよいのでしょうか。
そこで、今回はお墓を建てる際の墓地の所有権の有無や、墓守が亡くなった場合にやることについて解説していきます。
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この記事の目次
墓地の所有権は購入者にならない!墓地・霊園のもの
墓地の所有権は、お墓の購入者ではなく墓地・霊園など運営主体者のものになります。
なぜなら、墓地は墓地埋葬法第10条で、墓地を経営するものが自治体の許可を受けた土地だからです。
つまり、もともと土地の所有権は運営主体者であり、その土地を自治体が墓地として許可したものになります。「お墓を買った」という話を聞くと、感覚的にお墓すべてが自分のものになったような錯覚を覚えるかもしれません。
しかし、実際の所有権は異なるため混同しないようしっかり押さえておきましょう。
墓石の所有権は購入した人のもの
墓地の上に建っている墓石の所有権は、お墓を購入した人です。
イメージとしては、借地の土地に建物を建てているような感じといえばわかりやすいでしょうか。
ただ、お墓の場合の違いは一般的な不動産と異なり、借地権などはありません。
墓地の所有権は購入者ではない
上記で説明したように、お墓を建てている墓地の所有権は墓石購入者ではありません。
たしかに、墓地を使用するに際しては、墓地の使用権を購入する必要があります。
しかし、それはあくまでも使用権であるため、「お墓を建てているうちは墓地として使っていいよ」という話なのです。
このことを混同している人は結構たくさんいますので、しっかりと所有権の所在は確認しておきたいですね。
項目 | 所有権の所在 |
---|---|
墓石 | お墓の購入者 |
墓地 | 墓地の経営主体者 |
遺骨 | 祭祀承継者 |
墓地・霊園にお墓を建てるために必要な永代使用権
墓地や霊園から墓地を借りるためには、永代使用権が必要です。
つまり、墓地を使用してもよいという権利が永代使用権になります。
この永代使用権の代金のことは、永代使用料と呼ばれることが多く霊園と個人が墓所契約を結ぶときに一括で支払うことが一般的です。ここでは、永代使用権が譲渡できるのかなどについて解説していきます。
永代使用権の譲渡は原則禁止しているところが多い
永代使用権の譲渡は基本的に禁止と契約書にうたっている霊園や墓地が多い傾向です。
なぜなら、理由なく譲渡を認めてしまうと第三者が勝手に墓地を利用することができてしまいトラブルになりかねないからです。
ただし、墓地管理者から承諾が得られる場合は譲渡可能という例外を設けていることが多いでしょう。
一般的に前の墓守が亡くなって、お墓の管理者を変更しなくてはいけないような場合は、譲渡することができるケースが多いです。
霊園や墓地によって異なりますが、再度墓所使用契約書を結ぶ場合もあります。
一方、墓守は生存しているけど、別の親族や知人などに墓守を変更したいような場合は、親族内で管理する人が代わったと決めるだけでは永代使用権の譲渡にはなりません。
菩提寺など霊園管理者と協議のうえ、「譲渡ができるのか」「再契約が必要なのか」は事前に話をしたほうが無難です。基本的に永代使用権は勝手に譲渡ができないことは把握しておきましょう。
永代使用権は墓地として利用しているときまで
永代使用権が有効となるのは、お墓として墓地を利用しているときまでの権利です。
永代という言葉が入っているため、「いつまでも永遠に利用できるのでは?」と誤認してしまう人も少なくありません。
しかし、例えば墓地を引っ越しして現在のお墓を利用しなくなるようなケースでは、墓地を利用することができなくなります。
永代使用権を得るための永代使用料は解約しても返金されない
永代使用権を買う際に支払った永代使用料は、契約を解約したとしても基本的に戻ってきません。
やはり永代という言葉に引きずられてしまうことが多い傾向です。
例えば、短い期間しか利用しないで永代使用権を解除した場合は、長い期間ではないのでいくらか戻ってくると考えている人も少なくありません。
しかし、永代使用権は基本的に墓地を使用するための権利であるため、期間の長い短いは関係なく永代使用料は返金されないのです。この内容を把握しておかないとトラブルのもとになりますので注意しましょう。
墓地・霊園の使用規則は千差万別!しっかり確認しよう
墓地の使用規則は、墓地や霊園によって細かい部分は異なる可能性があります。
そのため、自分が希望する墓地や霊園ごと丁寧に確認しておくことが重要です。ここでは、「公営墓地」「民営墓地」「寺院墓地」の3つ種類から見ていきましょう。
公営墓地
自治体が経営主体となっているのが公営墓地です。
主に墓地の申込者が希望する自治体に住民票がないと利用できない規則になっていることが多いでしょう。
墓所を管理したりお墓以外の目的で利用したりすることを禁止していることが多い傾向です。
墓地の契約者が死亡した場合、承継の手続きをせず一定年数が経過すると墓所の使用権がはく奪されることもあります。
民営墓地
民営墓地とは、経営主体が宗教法人などで、運営は民間会社(石材店など)が行っている墓地です。
民営の墓地によっても使用規則はさまざまですが、指定の石材店しか利用できなかったり、一定年数経過した後は合祀されたりなどを定めているところもあります。
寺院墓地
寺院墓地は、経営主体および運営が宗教法人のいわゆるお寺の墓地です。
公営墓地や民営墓地に比べるとさまざまな制限が使用規則に記載されている可能性があります。
例えば、特定の宗派の利用を定めていたり、入檀条件(お寺にお墓を建てることのできる、檀家になるための条件)があったりするなどさまざまです。お墓を建てたりメンテナンスしたりする場合も、指定の石材店以外は利用できないことも珍しくありません。
墓地の種類によって、使用規則は千差万別です。おおむね規則の内容は同じようなものが多いですが、細かいポイントまでしっかりと目を通しておかないとトラブルのもとになりかねませんので注意しましょう。
墓守が亡くなったときにすること
先祖代々のお墓を見守って管理および継承していく役割の墓守が亡くなった場合はさまざまな手続きが必要です。
一般的には墓地使用者が墓守になっているケースが多いですので、手続きを放っておくと無縁仏になってしまったり、墓地使用契約を解除されてしまったりということが起こりえます。
墓守はだれが行っても問題ありませんが、民法897条では慣習に従い祖先の祭祀を主宰するものが承継するとあります。
墓守が亡くなってしまった場合はいったいどんなことを行えばよいのでしょうか。
「公営墓地」「民営墓地」「寺院墓地」の3つの種類から見ていきましょう。
公営墓地
公営墓地の場合は、墓地を管理している自治体の部署や、霊園の管理事務所などに連絡をしましょう。墓所使用契約を承継する手続きが必要になります。
墓守が死亡した場合は自治体へ死亡届を出すことになりますが、その手続きだけでは墓所使用契約の変更は完了しません。墓地使用者の名義変更や、管理費の引き落とし口座の変更などを死亡届とは別に行う必要があります。
民営墓地
民営墓地の場合も公営墓地と同様に墓地の管理者へ連絡をしましょう。管理費がある場合は、引き落とし口座の変更、墓地使用者名義の変更などが必要です。
寺院墓地
寺院墓地の場合についても公営墓地、民営墓地と同様にお寺の管理者へ連絡しましょう。
管理費の引き落とし口座変更や名義変更自体の手続きは変わりません。
くわえて寺院墓地で檀家になっている場合は、檀家を承継する必要があります。
檀家とは、お寺がスムーズに運営していくためのサポーターのようなものです。
そもそもお寺は、檀家が資金を出し合って支えていくという考え方が基本となっています。
檀家のシステムについてあまり周知していない人からすると、予想していない出費に戸惑ってしまうこともあるかもしれません。
そのため、寺院墓地の墓守を引き継ぐ場合は、十分に内容を把握してから手続きを進めたほうが賢明です。
墓守の名義変更手続きに必要な書類
墓守の死亡に伴う名義変更の場合は公的書類の提出を求められることも珍しくありません。
実際に必要となる公的書類は、霊園や墓地によっても異なります。ここでは、一般的に必要となる可能性の高い書類について確認しておきましょう。
除籍謄本
現在の墓守が死亡したことを確認するための書類が除籍謄本です。
戸籍から死亡に伴い除籍された旨が記載されています。
似たようなもので住民票の除票や、死亡届のコピーなどでも死亡の確認書類として受け付けてくれる場合もあるでしょう。
しかし、一般的には除籍謄本を用意しておけば間違いありません。
墓所使用契約書
現在のお墓の墓所使用契約書がある場合は、一緒に持参すると良いでしょう。
墓所使用契約書には、契約者が死亡したときについてなど、条項が記載されています。
どうしても見つからなければ、なくても手続きは進められます。
しかしできる限り探して、どんな契約内容なのかを把握したうえで継承の手続きをしたほうが良いでしょう。
墓守をする人の戸籍謄本
新しく墓守になる人の戸籍謄本もあったほうが良いでしょう。
なぜなら、戸籍謄本で亡くなった人との続柄の確認ができるからです。
お墓だけでなく、銀行や不動産の相続でも戸籍謄本は必要になりますので、あらかじめ本籍のある自治体で取得しておくとよいでしょう。戸籍謄本の取得で間違いやすいのが、現住所の自治体ではなく、本籍地がある自治体で交付申請が必要なことです。
遠方の場合は、2週間程度かかりますが、郵送で申請することもできますので早めに申請しておきましょう。
墓守をする人の住民票
戸籍謄本以外に、住民票も取得しておきましょう。
客観的に新しい墓守になる人の住所が証明できる書類です。
戸籍謄本に記載されている住所は、現在住んでいる住所とは限りません。運転免許証などでも確認書類の代わりにしてもらえる場合もあります。
墓守をする人の印鑑証明書
墓守をする人の印鑑証明書も用意しておきましょう。
印鑑証明書にのっている印影は実印になります。再度、墓所使用契約書や入檀するための契約書などを記載する際は、実印を押印することが多い傾向です。
そのため、実印と印鑑証明書はセットで持参することが賢明といえます。
ただし、霊園や墓地によっては3ヵ月や6ヵ月など印鑑証明書の期限を設けている場合があるため、確認してから取得したほうが良いでしょう。早くとりすぎて手続きに行けないと再取得しなくてはいけなくなる場合もあります。
まとめ
墓地の所有権は、一見難しいような話に感じるかもしれませんが、内容がわかるとしっくりくることでしょう。あくまでも、墓地は霊園・墓地から借りて使用しているものという認識が非常に重要です。
一方、墓石については建立した人が所有権を有することになります。お墓と一言でいうと、墓地と墓石などをひっくるめて話していることが多く混同してしまいやすいですが、しっかりと内容を押さえておきましょう。この記事で解説した内容を再度おさらいしていきましょう。
項目 | 所有権の所在 |
---|---|
墓石 | お墓の購入者 |
墓地 | 墓地の経営主体者 |
遺骨 | 墓石の所有者 |
- 墓地の永代使用権とは、墓地を使うことができる権利のこと
- 永代使用権の代金のことを永代使用料と呼ぶ
- 永代使用権は原則譲渡できない
- 永代使用権はお墓の引っ越しをすると消滅する
- 永代使用料は、使用の期間にかかわらず返金されない
- 墓所の使用規約は千差万別なため、必ず中身を細かく確認する
- 寺院墓地の場合は、檀家の承継や宗派など細かい確認が必要
- 墓守が亡くなった場合は、すみやかに霊園や墓地管理者へ連絡する
- 墓守の名義変更には、戸籍謄本や印鑑証明書など公的書類が必要
- 印鑑証明書は3ヵ月、6ヵ月など期限を設けている場合があるので注意
墓所使用契約を結んでしまうと、原則永代使用権は譲渡できません。
そのため、墓守を承継する場合は十分に霊園や墓地の使用規則などを把握したうえで署名捺印することが重要です。
契約書の内容を確認せず承継することは、さまざまなトラブルに発展しかねません。
「こうだろう」と決めつけずに、書面でわからない内容は墓地管理者へしっかり確認をしておきたいものですね。
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
先日、このような問い合わせがありました。「離婚して一人暮らしをしていた母が亡くなった。生前に自分のお墓を買っていたことを知ったのだが、自分(娘)は、もう故郷へ帰ることもなくなったので、そのお墓は使わずに、都市部で納骨を考えている。母が購入したお墓(墓地使用料)の代金は戻ってくるのか。」という内容です。
結論から言うと、墓地使用料は所有権ではなく、土地を使用する権利であるため、戻ってくることはありません。また不要だからといって、譲渡することもできず、そのまま権利を放棄するだけの手続きになります。墓地使用権のことを「永代使用権」ということもありますが、これは承継される限り永代にわたって使用することができる権利のこと。継ぐ人がいなくなってしまったら、使用できませんのでご注意を。