「いつまでに」と気になるけれど、お墓を建てる時期に決まりはない
お墓の建てると時期とは?徹底解説
- お墓は気持ちが整うタイミングで建てる。周忌法要に合わせることも。
- 公営霊園では抽選があるため、建立時期に注意。
- 生前墓は縁起が良いが、公営墓地では建てられないことも。
- お墓以外にも納骨堂や樹木葬など多様な供養方法が選べる。
「お墓はいつ建てるべきなの」「お骨をずっと家においておくのはよくないの?」
石材店で仕事をしてますとこうした質問をよく受けます。
お墓を建てる時期に決まりはありません。
家族の気持ちの整理も含めてお墓を建てて、納骨してあげるのがよいでしょう。
この記事では、お墓を建てる時期について詳しくまとめました。参考にして頂ければ幸いです。
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お墓を建てる時期に決まりはない
お墓を建てる時期に決まりはありません。
とはいえ長くこの仕事をしていますと「葬儀を終えて、いつまでにお墓を建てなければならないのですか?」とよく聞かれるものです。
やはり無意識の中で「いつまでも遺骨を自宅に置いていてはいけない」という考えが働くのでしょう。
「決まり」はないものの、お墓を建てて納骨することで「納得」や「落ち着き」や「安心感」がもたらされるには、お墓を建てる時期をいつにすればいいのか考えてみましょう。
納骨はグリーフケアの区切りのひとつ 長く置きすぎるのもよくない
グリーフケアとは死別の悲しみをケアする営みです。
筆者が身内の葬儀を行った時もそうですし、葬儀社や石材店として数々のお客様と接してきた経験からもそうなのですが、納骨はグリーフケアの区切りのひとつです。
私たちは受け入れがたい身内の不幸を時間をかけて受け入れなければならないのですが、そのために区切りの儀式をいくつか設けています。
それがたとえば葬儀であり、四十九日法要であり、納骨なのです。
「自宅に遺骨があるうちはなんだか落ち着かない」
「お墓の中に納骨して心がすっきりした」
こうした声を多くの人から聞きます。
お墓を建てる時期に決まりはありません。
故人様と離れがたいからずっと遺骨をそばに置いておく人もいます。
しかし別の見方をするならば、それは死別の悲しみを乗り越えられずにいることを意味します。
昔から「遺骨を長く自宅に置いておくものではない」と言われているのは、きっとそうした理由からではないでしょうか。
私たちは死別の悲しみを乗り越えて生きていかなければなりませんし、きっと亡くなった方もそれを望んでいるはずだからです。
一周忌や三回忌の建立が多い
お墓を建てる時期として一番多いのが一周忌法要や三回忌法要にあわせてというものです。
実際にお墓を建てるとなると、まず墓地を探さなければなりませんし、その後、石材店とのやり取りを経て、墓石工事へと取りかかります。
多くの人は墓地探しに時間を割きますし、石材店も複数の業者を比較するとなるとトータルでそれなりの日数を要するでしょう。
通常でも1~2年、墓地がなかなか決まらない人にとっては、3年近くかかることもあるかもしれません。
葬儀後は、ただでさえさまざまな法要や役所などの死後手続きであわただしくなります。
ですから、早くても1周忌法要にあわせて一周忌で間に合わなければ三回忌までを目安にお墓を建てる時期を設定します。
公営霊園の場合は毎年の抽選がある
もしも公営霊園を希望するならば、すぐには墓地が手に入らないかもしれないので注意が必要です。
公営霊園とは地方自治体が経営する霊園のことです。
とても人気が高いために取得が困難なのです。
ちなみに公営霊園が人気なのは次のような理由が挙げられます。
- 自治体が管理していることに対する安心感
- 永代使用料が比較的安い
- 宗教や宗派を問わない
- 石材店の指定などがなく自由に業者を選べる
空きさえあれば、申し込みをして使用料を支払えばすぐに墓地を取得できます。
しかし、ほとんどの公営霊園では空きがなく、返還された墓地、つまり誰かが使用していたものの墓じまいなどで更地となった墓地の再貸付を行います。
毎年同じような時期に申込者を募集し、申し込みが複数になるところは抽選によって利用者を決めます。
人気のある墓地では10倍や20倍にまで倍率が跳ね上がることもあります。
お墓を建てるのは生前・死後の2つのタイミング
お墓は身内に不幸が起きてから建てるものと思っていませんか?
実は生前にお墓を建てる「生前墓」や「寿陵墓」と呼ばれるものもあり、お墓を建てる時期には生前と死後の2つのタイミングがあります。
生前にお墓を建てることは縁起がよいとされる
生前にお墓を建てることは「寿陵」とも呼ばれるほどで、とても縁起が良く、長寿や子孫繁栄や家内円満に恵まれると言われています。
生前墓の元祖といえば秦の始皇帝でしょう。
「秦始皇帝陵」は1974年にその地域の住民に発見されるのですが、8000体もの兵馬俑はあまりにも有名です。
「俑(よう)」とは、死者と一緒に埋葬する副葬品のことで、死後の霊魂の生活のために納められたそうです。
また、秦の始皇帝は不老不死を願ってやまない人で、辰砂(しんしゃ)と呼ばれる赤い秘薬を心底大事にしました。
いまでも、お墓に彫られた健在な人の名前の部分には朱色を入れますが、これも辰砂が起源です。
秦の始皇帝に限らず、日本でも歴代の皇族が生前墓を建てています。
古くからの有力者は、来世の安寧を願って生前にお墓を建て、それによってこの世での健康や幸福を祈ったのです。
昭和天皇が崩御された時には八王子にある武蔵野陵に埋葬されましたが、「大喪の礼」(たいそうのれい:天皇陛下の葬儀)の直後に埋葬するということはすでに天皇陛下のお墓を生前に建てていたことを意味します。
生前墓のメリット
生前にお墓を建てることには次のようなメリットがあります。
●自分たち固有の祈りの場所を持てる
お墓を持つことで自分たちだけの「祈りの場」を持つことができます。
私たちは無意識のうちに多くのことを祈っています。
生前墓が縁起がよいというのも神仏やご先祖様と向き合って祈ることが習慣化することによって、長寿や家内円満を引きよせてくれるのではないかと筆者は考えます。
祈りは、人間が文化的に生きる生き物である以上、とても大切な営みなのです。
●ご先祖様と向き合える
お墓は家の中で不幸が起きてから建てるものだと考える人が大半です。
しかし一方で生前にお墓を建てる人が一定数いるのも事実です。
それはお墓というものが亡くなった人のためだけではなく、生きている私たちをも幸せにしてくれるものだからです。
私たちの命は、何代も何十代も前にこの世に生きたご先祖様からのつながりによっていまここにあるのです。
遺骨があってもなくても墓石を建立してお墓参りすることで、自分たちのルーツである古いご先祖様とも向きあえるようになるのです。
●お墓があることへの安心感
自身が亡くなったあとに入るべきお墓があるのは大きな安心感につながります。
死後の行方が分からない人よりも死後の行方が分かっている人の方が穏やかに息を引き取ることができるというのは、多くの医療関係者や研究者からも聞かれる言葉です。
亡くなったあとの自分の遺骨の行き先がある。
そのお墓に子孫たちが参ってくれることの安心感が死への恐怖を和らげてくれるのです。
●ゆっくりと時間をかけてお墓を決められる
生前墓であればいつまでにお墓を建てなければならないなどの制約がありません。
墓地選びからデザインまで自分が好きなようにお墓を作ることができます。
死後のお墓つくりは遺された家族がするものですから自分の意向を反映できません。
●子供たちに迷惑をかけなくて済む
子供たちに迷惑をかけたくないからお墓を建てないという人がたくさんいますが、実は生前にお墓を建てておくことでも、負担の軽減になります。
なぜなら親の死後に新たな埋葬先や墓地を探す手間と費用が省けるからです。
子供たちにお墓の心配をさせなくて済むのです。
●相続税対策になる
お墓や仏壇など信仰の対象として手を合わせるものは「祭祀財産」と呼ばれ、相続税がかかりません。
どうせお墓を建てるのであれば、生前にお墓を建てておいた方がいいでしょう。
仮にお墓にかかる費用は、事前にお墓にしておけば相続税から控除されますが、現金などの資産として残していた場合は控除の対象にならず、相続税が課税されてしまうのです。
生前墓のデメリット
生前墓のデメリットにはどのようなものがあるのか挙げてみました。
●公営墓地では建立ができない
すべての公営墓地ではないのですが、ほとんどの場合、公営墓地は生前墓が建立できません。
利用申込の段階で遺骨の有無を確認されるのが常なのです。
自治体がこうした条件を設けるのは、墓地の存在意義を信仰の場としてではなく、公衆衛生の場として考えているからだと思われます。
つまり、手を合わすことを必要としている人よりも遺骨の埋葬を必要としている人を優先していることを意味します。
ただ、筆者の経験でも生前墓が可能な公営墓地もあります。
申込の際は事前に自治体の専門窓口に確認を取っておきましょう。
●お墓の管理をしておかないとすぐに劣化してしまう
生前墓を建ててありがちなのが、建てたはいいが開眼供養もせずにお墓参りもしないというケースです。
中に遺骨が入っていないためになかなかお墓参りに足が向かない人が多いようです。
すると、どうしても墓地は汚れてしまい、石材も時間をかけて劣化してしまいます。
「とりあえず公営墓地を確保しておきたい」「相続税対策のために」というような合理性から生前墓を建てる人に顕著です。
これは現代人が「お墓=遺骨が眠る場所」と考えているから起こってしまう現象だと思います。
しかし、お墓はその家固有の祈りの塔です。
また、中に遺骨が入っていなくても私たちには目に見えないけれど確実にこの世界を生きたご先祖様とのつながりがあります。
そうした古いご先祖様との出会いの場としてもお墓参りをしてお墓をきれいにしておきましょう。
現代は、葬儀のあとにお墓を建てるのが一般的
筆者の経験でも生前墓を建てる人の割合は全体の1割も満たしません。
それほど現代では葬儀のあとにお墓を建てるのが一般的です。
生きている間というのは家事や仕事をしながら親世代の医療や介護などの心配をしなければなりません。
とてもお墓にまで考えが回りませんよね。
そして火葬を終えることで遺骨という「モノ」が残ります。
この粗末にはできない「モノ」をどうすればいいかということで、はじめてお墓について思いを巡らせるのです。
しかし、お墓の役割は「遺骨の行き先」だけではなく、「遺された私たちの祈りの場」もあるということを強調しておきたいところです。
お墓は故人や先祖の供養のために建てる
お墓は故人様やご先祖様のために建てます。
亡くなった人の遺骨をきちんと土に還して、その上に手を合わせるための塔を建ててお墓となるのです。
私たちは亡くなった人の死後の魂の行方をどうしても気にしてしまう生き物のようです。
どんな雨にも風にも動じない墓石が土の中の遺骨を守ってくれることで、私たちはお墓に行くことでいつだって故人様やご先祖様に会えるのです。
お墓は私たちの幸せを願うために建てる
お墓は亡くなった人のためのものと思いがちですが、遺された私たちの幸せを願うためでもあります。
なぜなら死者の供養はそのまま私たちの安心感につながるからです。
逆を言えば、私たちが元気であれば死者もまた供養されているのではないでしょうか。
儒教の言葉に「身は父母の遺体である」というものがあります。
つまり、死者も生者も先祖も子孫も、すべてはこの身体に集約されているという儒教独特の死生観があり、それが日本社会の全体の死生観や宗教観の基層を成しています。
お墓に行けばご先祖様に会えますし、お墓を掃除することで私たちの心も洗われるのを多くの人が経験しているのではないでしょうか。
お墓は私たちの幸せのシンボルでもあるのです。
慌ててお墓を建てなくても供養方法は他にもある
最近はライフスタイルが大幅に変化したことで埋葬や供養の方法も多様化しています。
葬儀ができたからといって慌ててお墓を建てなくてもさまざまな方法があります。
納骨堂
納骨堂とは寺院などにある建物の中の納骨施設です。
昔は、お墓を建てるまでの一時預かりとしての役割が強かったのすが、最近では納骨堂そのものが納骨と供養の施設として捉えられています。
要は建物の中のお墓と思えばいいでしょう。
もっともポピュラーなのがロッカー型や仏壇型です。
ロッカー型はロッカーのような棚に納骨して、共有の本尊(仏像や仏画)に手を合わすもの。
仏壇型は、1列そのものに手を合わす須弥壇部分と遺骨を収蔵する納骨部分が併設されたものです。
その他、都市部ではビル型の納骨堂なども登場し、人気を集めています。
樹木葬
樹木葬とは、墓石ではなく、樹木を礼拝の対象にしたお墓のことです。
自然の里山の中で人工の構造物を一切使わない「里山型」、市街地の霊園の中に設けられた「霊園型」の樹木葬墓地があります。
里山型は地方や郊外にならざるを得ないため霊園型が主流になっています。
昔ながらのお墓に抵抗がある人や、ゆくゆく跡取りが途絶えてしまうことが分かっている人に選ばれています。
散骨
散骨とは海などに遺骨を撒く供養法です。
場所は海に限らず、山や川などで行うこともあるようですが、地元住民の反発やトラブルの原因にもなりかねないので、海の沖合での散骨をしている業者が大多数です。
しかし海洋散骨も自治体によっては条例やガイドラインが策定され、一定の規制をかけられている所もあります。
いまは法に抵触しないことでも近い将来にどうなるかは不透明でしょう。
永代供養
永代供養とは死者や先祖の供養を寺院に預けることです。
身寄りがいない、あととりがいないなどの問題を抱えている人たちは、最終的には永代供養として祀られます。
納骨堂にせよ、樹木葬にせよ、お参りに来る人がいるうちはいいのですが、そうでなくなった時には永代供養として遺骨を合祀します。
最近はそうした需要が多いので、契約段階で合祀の部分までフォローされていることが多いようです。
お墓を建てる時期に捉われすぎないように
さて、ここまでお墓を建てる時期について綴ってきました。
しかし、あまり時期にはこだわらないようにしましょう。
ここで列挙したのはあくまでも一般論ばかりですし、それぞれの家族によって事情や想いことなるはずです。
筆者が担当して建立のお手伝いをした人でも、10年越しで公営霊園が当選してからお墓を建てた人、何でもない年のお盆にあわせて墓石を建てた人、ずっとほったらかしにしておいたところ、ある時親戚に指摘されてお墓を立てた人、本当にさまざまです。
お墓を建てる時期に決まりはありません。
長い目で見て、供養が形として実現できるようなお墓作りを無理のない形でしていただきたいものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
では最後に、この記事のポイントを箇条書きでまとめます。
この記事のまとめ
- お墓を建てる時期に決まりはありません。
- 納骨は、グリーフケアの区切りのひとつ
- お墓を建てる時期として一番多いのが、一周忌法要や三回忌法要にあわせてというもの
- 公営霊園の場合は毎年の抽選がある
- 生前にお墓を建てることは縁起がよいとされる
- ほとんどの人は葬儀のあとにお墓を建てる
- 納骨堂、樹木葬、散骨、永代供養など、お墓を建てなくても供養方法は他にもある
- お墓を建てる時期に捉われすぎず、無理のない供養の形を考えるべき
監修者コメント
監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
お墓を建てる時期に決まりはありません。
そうはいっても、一周忌や三回忌、お盆やお彼岸などをひとつの目安とする人が多いように思います。
自宅に長く置いておく人もいますが、長くなりすぎると納骨するタイミングを失ってしまうケースが見受けられます。
ところで、2019年10月に消費税が増税されます。
墓地使用料には課税されませんが、墓石と工事費等は消費税がかかります。
増税前の値段でお墓を建てたいとなると、新税率適用開始前日の2019年9月30日までに引き渡しが完了していることが条件となります。
お墓を検討しはじめて契約、引き渡しまで最低数か月かかりますので、少なくとも7月あたりまでは契約を済ませておきたいものです。
なお、すでに2019年3月31日までに墓石工事の契約が完了しているようであれば、旧税率が適用されます。